ストアギークは、2024年5月29日、リテールメディア活用を推進され、実際に「ストアギークサイネージ」をご導入、ご活用いただいているウエルシア薬局株式会社とサンスターグループのキーマンをお招きし、オンラインセミナーを開催しました。(開催概要はこちら)
当日は、メーカーや広告代理店、小売企業等でマーケティング・広告宣伝、営業・営業企画等をご担当されている方々を中心に、約170名の皆さまがご参加くださいました。この場をかりて御礼申し上げます。
本レポートでは、「メーカーと小売、現場の最前線から見えたリテールメディアへの期待と課題」というテーマのもと、セミナーの講演内容と登壇者へのフォローアップインタビュー内容のポイントをまとめてお伝えします。
登壇者プロフィール
ウエルシア薬局株式会社
商品本部 マーケティング部
竹見 憲一氏(写真中央)
ウエルシア薬局に入社後、化粧品バイヤーに配属、その後マーケティング部へ異動。
バイヤーの経験から、メーカー様・代理店様・バイヤーと連携し、SNS販促と店頭が連動した企画を作成。自社アカウント運用を通じて、販売側からの発信を強化、市場へ情報発信をするため奮闘中。
サンスターグループ マーケティング統括部
オーラルケアマーケティング部
GUMグループ コミュニケーションチーム長
和田 知尋氏(写真右)
2004年サンスターグループ入社。リテール営業部、マーケティング部にてスキンケア・ヘアケアの商品開発を担当した後、デジタル戦略部にて全社横断のオウンドメディア「クラブサンスター」の開発運用、マーケティングデータ基盤の設計開発に従事。2018年より現職。オーラルケアマーケティング部にてGUMブランドのコミュニケーション開発運用を担当。
株式会社ストアギーク
取締役 兼 株式会社フェズ サイネージ事業部長
安藤 尚人(写真左)
アドテクノロジー業界に黎明期から関わり、前々職のフリークアウトでは営業局長として消費財領域を中心に担当。2016年ジョンソン・エンド・ジョンソンへ入社。TV CM、デジタル施策等、包括的なメディア戦略の最適化、またリテール連携施策をリード。2020年よりフェズへ入社。購買データを活用した広告配信ソリューション『Urumo Ads』の事業開発、商品企画の責任者を経て現職。
※所属・役職は掲載時のものになります。
リテールメディア活用のきっかけ
ウエルシア薬局/竹見氏
「リテールメディア」という定義で活用し始めたのは最近ですが、以前からお客様に配信する「クーポン」や「アプリ」を使った取り組みは行っていました。
ウエルシア薬局が運営するオウンドメディアは、60万人程のユーザー様にご利用いただいているので、メーカー様の商品をご紹介するメディアの1つとして使ってもらえるのではないか、と思ったのがリテールメディア活用のきっかけでした。
ただ、広告枠を販売した経験がない上、このメディアを活用することでどの程度収益が上がるのかも未知数なので、ハードルがありました。メーカー様も、代理店様も、リテールに何ができるかご存知ない方が多いと思いますし、テレビCMと比べて広告出稿金額が小さいので、ビジネスとしての本格的な活用はこれからという印象です。
一方で、消費を取り巻く環境の変化から既存のマーケティング戦略に限界を感じ、今までになかった新しい取り組みが求められている。そんな中「リテールメディア」が登場して、注目を集めているのだと思います。
サンスターグループ/和田氏
私がデジタル戦略部に移ったのが2011年でした。当時は「リテールメディア」という言葉はもちろんありませんでしたが、オウンドメディア「クラブサンスター」を活用して店頭でモノが動く仕組みづくり、お客様のLTVを高めていく施策に取り組んでいました。
具体的には、キャンペーンを通じて、お客様に「クラブサンスター」にID登録をしていただき、サンスターの他商品をご紹介したり、店舗で使えるクーポンをお渡ししたりしていましたね。
チラシがWebに変わり、メルマガがアプリに変わり、テレビCMが以前より効きにくくなっている中で「リテールメディア」が登場し、データを活用して実際のお客様の購買状況やインサイトが見える環境が整ってきている。リテールメディアの活用によって、“何となく良かった・売れた/売れなかった”から、何が良かったか・悪かったかがわかる状況になり、次の一手に繋げられるようになったのは大きいと思っています。
また、お客様がモノを買うモチベーションになっているタイミングで情報をインプットできることも、リテールメディアの利点です。
リテールメディアの取り組み事例と効果
ウエルシア薬局/竹見氏
ウエルシア薬局のマーケティング部では、メーカー様の営業部門の方との商談が中心ですが、リテールメディアの活用が進むにつれて、マーケティング部門や広告代理店の方とお話する重要性が高まり体制の整備が求められています。
メーカー様の視点でリテールメディアを捉える際、特定流通におけるブランド売上を上げる取り組みと、市場全体でブランド売上を上げる取り組みの2パターンがあると思います。
ウエルシア薬局における「ストアギークサイネージ」を使った取り組みでは、一部の設置店舗における実証実験ではあるものの、オーラルカテゴリ全体で5.5%、訴求サブカテゴリで6.9%の売上金額アップするという結果が得られました。
販促施策では、ブランドAは売上が上がったがBでは下がり、カテゴリ全体では結局変わらなかったというパターンがよくあるのですが、「ストアギークサイネージ」のようにカテゴリー全体が引き上げられる施策は、リテールとしてもメーカー様と一緒に取り組みやすいと感じています。
サンスターグループ/和田氏
「ストアギークサイネージ」を使った取り組みでは、2024年1月から「GUMハグキラボ」という新商品のコミュニケーション施策を行っています。15秒間の動画で、商品効果を直接伝えるもの、お客様に歯周病に対する意識喚起をするもの、キャンペーン情報を伝えるものをそれぞれ店頭の定番棚前で配信し、効果測定に取り組んできました。
その結果、ストアギークサイネージ非設置店舗と比べて、商品売上が11.2%増加、GUMブランド全体の売上も2.2%増加しました。新規購買率は、商品単体では36.2%アップ、GUMブランド全体では3.2%アップしました。
また、店舗入口のサイネージで歯周病ケアの啓発をしたところ、オーラルケアカテゴリー全体の売上が未設置店舗と比べ1.5%アップしたり、販売店が運営するアプリと連携してサンスターの歯周病チェックシートを使った意識喚起をしたところ、クーポン利用率が13%アップしたりしています。
こうした取り組みは一過性のものではなく、データを活用し継続的に検証していくことで、長期でのLTV育成に繋げていきたいと考えています。
定番棚前サイネージに関する消費者調査の結果
ストアギーク/安藤
ストアギークでは、今年3月にサンスターグループ様や「ストアギークサイネージ」設置企業様にご協力いただき、『定番棚前サイネージに関する消費者調査』を実施しました。(調査結果に関するプレスリリースはこちら)
「ストアギークサイネージ」という新しいデバイスについて、消費者がどう捉えているのかを確認すべく、設置店でオーラルカテゴリ商品を購入された方を対象にアプリを介してリサーチをかけました。自由回答でいただいたコメントをポジティブ/ニュートラル/ネガティブに分類させていただいたところ、サイネージ接触者の約半数からポジティブな反応をいただきました。正直なところ、想定していた以上に多くの方からポジティブな回答がいただけたなと感じています。
具体的には、視認性の観点から「モニターがあると気になって箸を止めて見てしまう」「小型でもインパクトがある」、購買のきっかけの観点から「どの製品が良いかわかりやすく、購入の決め手になった」「普通に陳列されているだけより、注目しようと思う」、商品理解の観点では「自分に合っていると思って買った」「GUMシリーズに力を入れていると思ったので、GUMの歯ブラシを買った」というように、定番棚前ならではの直接的なフィードバックをいただきました。
竹見様、和田様からもお話いただきましたとおり、やはり「ストアギークサイネージ」は定番棚前でお客様が商品を購入検討しているタイミングで効果的にリーチできる点が強みだと考えています。
サンスターグループ/和田氏
今回のアンケート調査では、「ストアギークサイネージ」による売上増加や新規購買率の上昇だけではなく、リーチ効果やブランドリフト効果にも寄与するという結果が得られています。
ストアギークサイネージを設置していない店舗のオーラルカテゴリ購買客(サイネージ非接触者)と比べて、設置店のオーラルカテゴリ購買客(サイネージ接触者)の方が、「G・U・M(ガム)」ブランド広告の認知率は43%高く、購入検討割合も30%高かったことがわかりました。
仮に購買に繋がらない場合でも、お客様に対するブランド認知を高められるという点で広告効果があると捉えています。
リテールメディア活用における課題
ウエルシア薬局/竹見氏
リテールメディア活用の現場においては、大きく2つの壁があると捉えています。
1つは「情報共有の壁」です。ブランドを育成するために、メーカー様のブランドマーケティングや宣伝担当の方々が戦略を立て実行していく上で、多くの関係者と情報を共有する必要があります。メーカー様内では営業担当、リテール内ではバイヤーや販促担当というように、限られた商談時間の中で、伝言ゲームのように施策説明が行われていく状況です。各々の担当者が正しく理解し共有できなければ、施策を適切に実行し成果を上げるのが難しくなってしまいます。
もう1つは、「共通言語の壁」です。昔は、テレビCMによるプロモーションの話がほとんどでしたので「GRP」という共通指標をベースにコミュニケーションできていましたが、様々なメディアを活用するようになり「GRP」だけでなく「imp」「リーチ」「エンゲージ」「CPM」などの用語が登場しました。デジタルマーケティングに明るい人であれば話が通じますが、専門外の方が全てを理解するのは難しく、共通の指標で商談を進めにくい状況になっています。
サンスターグループ/和田氏
課題点は大きく2つあると考えています。
1つは、想定外の購買セグメントの発掘が難しくなることです。技術の進化によって最適化が進みすぎると、セレンディピティ(偶然の出会い)が排除されていき、お客様が新しい商品にたまたま出会うチャンスが少なくなり、マーケターにとっては新たなセグメントに出会うきっかけが少なくなるので、それはそれで悲しい側面もあるなと思います。
2つ目は、広告フォーマットがシンプルで表現の幅が少ないことです。リテールメディアにおいては、現在様々な企業がサービス開発を進めている段階なので、Web広告と比べるとフォーマットの種類がまだ少ない印象です。今後、UI/UXの面で改善・進化の余地があると感じています。
また、お客様とのコミュニケーション設計についても、改善余地があると考えています。
テレビCMは、莫大なリーチを持っているので未だ有効なツールだと考えてはいますが、最終的にお客様が店頭で購買することを考えると、そこから逆算してどのような意識喚起をしていくのかをもっと考えていかなければならないと思います。
お客様をマスで捉えるのではなく、その方がその商品にとって新規なのかリピートなのか離脱なのか、お客様の状況を理解し各々に合った情報提供をすることで、より効果の高いコミュニケーションが可能になると考えています。
リテールメディアの活用においては、今まさにトライアンドエラーを繰り返しているところです。各カテゴリーや商品においてデータを蓄積しつつ、最適なコミュニケーション設計を実現していければと思います。
リテールメディアに期待すること
ウエルシア薬局/竹見氏
リテールメディアの中でも特に「ストアギークサイネージ」に期待することとして、店舗売上の7~8割を占める“定番棚”での販売を強化できる点が非常に大きいですね。“定番棚”という購買検討タイミングで、お客様の邪魔にならず自然と目に入るコミュニケーションツールは、非常に効果が期待できると考えています。
また、スタートの施策検討段階から購買(POS)までを関係者で共有できるというのも重要なポイントです。課題のところでもお話したとおり、リテールメディアを活用した取り組みにおいては、メーカー様のブランドマーケティング/宣伝担当や営業担当、リテールのバイヤーや販促担当といった関係者が施策の内容や効果を共有し正しく理解する必要があります。「ストアギークサイネージ」は、メーカー様とリテールの協働を強化するための1つの共通言語になりうると期待しています。
サンスターグループ/和田氏
リテールメディアは、お客様が購買モードになっているタイミングでコミュニケーションできるのが非常に優れていると考えていて、期待する点は大きく3つあります。
1つは、ショッパーインサイトを起点にした広告メニューの開発です。お客様が購買するモチベーションはドラッグストア・スーパーマーケット・ホームセンター等の店舗や場所、タイミングによって異なります。それぞれのお客様のインサイトに最適化したコミュニケーションを目指していくという点で、改善の余地があると思っています。
2つ目は、お店全体のDXによるリテールメディア化です。デジタルの場合、広告を見た、広告をクリックした、その後購入ページを閲覧した、購入したというユーザーの行動データを取ることができますが、店舗のDX化が進むと、お客様が店舗に来た、商品を見た、手に取った、レジで購入したということがデータで見えるようになり、マーケティング施策の幅が広がり、広告の無駄打ちもなくなってきます。未だ技術的な課題はあると思いますが、期待したいポイントです。
3つ目は、店外/店内広告をワンソースで統合したリコメンド最適化です。お客様が「GUMって私のことわかってくれている」と感じてくれる、ノイズ(無駄)にならないコミュニケーションをすることで、効率を高めていけるのではと期待しています。
以上、講演内容と登壇者へのフォローアップインタビュー内容の概要をまとめてレポートしました。なお、本レポートでは「ストアギークサイネージ」に関するサービス説明は割愛しております。
「ストアギークサイネージ」に関して、
ご不明点やご相談は下記よりお願いします。